水蒸気は大気中では微量分子に過ぎないが、その相変化に伴う潜熱は集中豪雨など激しい気象現象を駆動する主要なエネルギー源であることがしられている。特に一般に寿命が短い顕著現象の構造を買い笑みするためには高精度かつ高分解能観測が重要である。現在、最も一般的な大気水蒸気測定法であるラジオゾンデ観測は高度約10kmまでの水蒸気観測が可能であるものの、時間分解能を数時間より短くすることは難しいため数時間の時間スケールを持つ激しい気象擾乱のメカニズムの観測的解明には不十分である。本研究ではこうした要請に応えるべく、大気レーダーを用いた水蒸気推定手法の開発を行ってきた。これは大気レーダーのエコー強度に含まれる水蒸気に関する情報を取り出すことにより、全天候型かつ昼夜にかかわり無く水蒸気推定を行うことを目指す。本年度には現業メソスケールモデルの予報値を利用した推定アルゴリズムを開発した。 昨年までに開発されたアルゴリズムでは、12時間程度の間隔で上げられたラジオゾンデデータを初期値としていた。本推定手法の実用化にはラジオゾンデによる直接測を必要としない推定手法の開発が必須である。このため、ラジオゾンデ観測値の代わりに現業数値予報モデルデータを利用し、直接観測をよらない実用的推定手法を実現した。これにより近傍でラジオゾンデ観測が行われていない地点でのウインドプロファイラを用いた水蒸気推定に道が開かれた。
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