水蒸気は大気中では微量分子に過ぎないが、その相変化に伴う潜熱は集中豪雨など激しい気象現象を駆動する主要なエネルギー源である。特に一般に寿命が短い顕著現象の構造を買い笑みするためには高精度かつ高分解能観測が重要である。現在、最も一般的な大気水蒸気測定法であるラジオゾンデ観測は高度約10kmまでの水蒸気観測が可能であるものの、時間分解能を数時間より短くすることは難しいため数時間の時間スケールを持つ激しい気象擾乱のメカニズムの観測的解明には不十分である。研究代表者はこうした要請に応えるべく、大気レーダーを用いた水蒸気推定手法の実用化を進める研究を行ってきた。今年度の具体的成果は以下の通りである。 1. 沖縄亜熱帯域での水蒸気推定 昨年までに開発された数値予報モデルを第一推定値とした水蒸気推定手法を発展させ沖縄の400MHzウインドウプロファイラに活用した。えられた観測データをもとに水蒸気プロファイラを推定した。このために解析用PCやデータ保存用ハードディスクを購入した。 2. 周波数領域干渉計映像法を用いた乱流エコー観測 周波数領域干渉計映像法を用いた乱流産卵の試験観測実験をMUレーダーを用いて2008年10月、11月に実施した。得られたデータに周波数領域干渉計映像法を適用して乱流パラメーターの微細分布を得ることに成功した。これらから水蒸気プロファイルを推定するのに重要な役割を果たす乱流の存在率を推定することが可能となり、さらなる水蒸気推定の精度向上につながることが期待される。
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