研究概要 |
本年度は,11月下旬から3月までの期間に,石川県河北郡内灘町を中心とする地域で,広帯域ディジタル干渉計2機と,電界と電界変化を測定するアンテナ,β線およびγ線を測定するシンチレータを設置し,冬季雷嵐の観測を行った。観測地として,同地を選定した理由は,平地で電波障害物が少なく,見通し伝播のVHF波帯電磁波を対象とする広帯域ディジタル干渉計による観測に適していること,積雪がさほど多くなく大阪からのアクセスも容易なことに加えて,内灘風力発電所の風車が存在し,毎冬数回の被雷(大半が風車への直接雷撃ではなく,これを防ぐために設置された被雷鉄塔へのもの)があることが挙げられる。また,岐阜大学や名古屋大学なども,同地での雷観測や誘雷実験等を計画していることから,これらの機関との協力関係も構築すべく調整を行った。広帯域ディジタル干渉計は,研究代表者らの研究グループが基盤研究(A)等で開発を行ってきた,広帯域ディジタル干渉計の試作機を用い,ケーブル等の消耗品の交換とデータ処理用パソコン,複数地点での時刻同期用GPSの導入にとどめ,補助金範囲内でのシステム構築を行った。また,観測地点は,地元の公立施設や学校,民間の牧場などを利用した。これらの観測所間は,PHS回線等で結び,遠隔操作や監視,データ転送を可能としている。このように構築した広帯域ディジタル干渉計を中心とする多地点観測システムを,11月までに整え観測を開始した。残念ながら,本年度は史上最高とも称される暖冬で,冬季雷放電を引き起こす寒気の流入が弱く稀ではあったので,3イベントに止まったが各観測機で雷放電現象やそれに伴う関連データを取得し,必要な調整を実施した。また,少数ながら雷放電路の三次元可視化にも成功している。次年度以降は,引き続き本年度立ち上げた観測体制を維持し冬季雷嵐の観測を行うと共に,本年度開発をはじめ以前機能向上の予知がある准実時間三次元化ソフトウェアの構築を中心に,本研究課題の目的である冬季雷雲構造の把握を行う。
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