研究課題
本年度も前年度までに引き続き、11月から1月にかけて、石川県河北郡内灘町を中心とする地域で冬季雷観測を実施した。昨年度までの観測結果から、合計3地点の観測地のうち2地点を新たなサイトに変更し、より三次元観測に適した配置としている。この観測地点変更に当たっては、夏期の事前観測を実施し、その有効性を確認していることも付記する。観測装置としては、時刻同期とノイズ対策の面で改良し、配置を含めて冬季雷に特徴的な高構造物からの上向き放電で開始する雷放電現象の三次元観測に照準を絞った観測とした。この結果、一連の雷放電現象であるにも関わらず、雷雲内の正負両極性の電荷を中和するような放電現象の観測に成功した。これは、本研究の目的である「三次元観測と雲内電荷分布の把握」を行ったために得られた新発見と言えるものであり、本研究の特筆すべき成果である。また、同地で風車への落雷について観測を行っている岐阜大学と、本研究期間の間に連携関係を強めてきた結果、本研究の広帯域ディジタル干渉計観測結果と、落雷時の電流測定結果を統合し総合的に解釈することで、initial continuing current(ICC)パルスに伴う電荷移動の推定に成功した。風車の避雷鉄塔に対し上向き放電で開始する落雷について、6例のICCパルスを観測した。このうち2例については、直前に負リーダの進展が観測され、これが連続電流チャネルへ接続している。この観測結果は、負リーダが雷雲電荷と大地間に電離チャネルを生成しICCパルスを発生させたことを示すもので、電荷構造とその移動についても新たな知見をもたらすものである。これらの成果は、学術雑誌や学会等で発表し、関連研究者の間で注目を浴び、活発な議論を行った。
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Journal of Atmospheric Electricity 29-1
ページ: 13-21
Geophysical Research Letters 35-L10804
ページ: doi:10.1029/2007GL032438