研究概要 |
モンスーン低気圧はインドモンスーンの雨季(6-9月)にベンガル湾〜インド北西部に現れる1000km(総観規模)スケール擾乱であり、擾乱の通過はしばしば多量の降水をもたらして洪水の原因となる。しかしモンスーン低気圧をターゲットとした観測は1970年代後半に実施されたMONEX国際観測プロジェクト以降あまり活発でなく、現在のより高い高度分解能(100m以下)をもつ測器を用いて、またこの気象擾乱の構造を得るのに必要な時間間隔(12時間間隔或いはそれ以上)で観測を行う集中観測がほとんど行われていなかった。そこで本研究は2007年雨季に洪水災害で知られるバングラデシュの首都ダッカにおいて、高層気象観測の集中観測をバングラデシュ気象局の協力の下で実施した。当初の計画では前年度に観測を実施する予定であったが、バングラデシュ気象局の事情により観測実施を1年繰越した。 バングラデシュ気象局では信頼できる測器を用いて通常2日に1回、或いは1週間に2回の低頻度で高層気象観測を実施している。そこで観測機材(ゾンデ,気球,水素ガス)を提供し、バングラデシュ気象局の職員を臨時に雇用し、1目2回(12時間間隔)或いは1日4回(6時間間隔)の集中観測を6-7月の1週間及び8月の2週間実施した。観測データは観測後直ちに気象局の回線を通じて世界気象機関に通報し、この期間の南アジア域の観測データ強化に役立てた。この観測によって4つのモンスーン低気圧を観測することができたため低気圧の鉛直構造について解析を開始した。2つの観測期間の間に当たる7月中〜下旬の大雨によりバングラデシュにおいて大洪水が発生したためこれらの期間も解析に含める。
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