本年度は気候モデルのプログラム変更とテスト実験を兼ねた長期コントロール実験を行った。先ずは、気候モデルに組み込まれているエアロゾル輸送コードの開発者の協力を得て、炭素性エアロゾルの内部混合過程を気候モデルに組み込む手法の検討を行い、比較的簡便ではあるが、現状のコードへの移植がし易く、既に別途使用実績のある手法を選定し、組み込み作業を行った。なお、当初は、同一の実行形式(バイナリ)を使用しながら、炭素性エアロゾルの混合状態(内部/外部混合)を実験の目的に即して設定する事が可能になる構造を目指したが、諸般の事情により混合状態の違いによりバイナリを分けることにした。ただし、このことによる研究目的達成への影響は無いと考えられる。変更の済んだモデルを用いて、産業革命以前の状況を仮定した長期実験(コントロール実験)を行った。研究計画では、現在気候の再現性を確認する予定であったが、来年度以降に行う予定の20世紀の気候再現実験のために必要となる初期値データの作成を先行させる必要があったため、コントロール実験の実施を優先させた。なお、変更前のモデルを用いて行われたコントロール実験との比較を行ったところ、過去の(産業革命以前の)気候の再現性に遜色の無い事が確認された。来年度には、改めて現在気候の再現実験を行って、再現性の相違などを確認することとしたい。コントロール実験は、本報告書作成時点で250年程度計算が進んでおり、このまま更に200年程度計算を継続して、20世紀の気候再現実験に必要な初期値(100年間隔で4個程度)を得たい。
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