研究概要 |
地球温暖化が進むことで、極端な気象現象(以下極端現象)の頻度分布が大きく変化することが、大気海洋結合モデルを用いて予測されている。しかし、これまではモデルが現実の頻度分布を精度良く再現しているかどうかは、十分に検証されてこなかった。本研究では、モデルの計算結果と観測データを比較することでモデルの検証を行う。また精度を検証されたモデルを用いて将来予測を行う。 本年度は、モデルで計算された20世紀中の極端現象の頻度分布変化が、観測を再現できているかどうかを、最新の統計分析手法を用いて全球規模で検証し、さらに過去の変動の要因推定を行うことを目標としていた。実際に、英国ハドレーセンターと協力関係を結ぶことで、全球規模のグリッド化された日最高・最低気温観測データセット[Caesar et al.,2006]を入手し、モデルの実験結果との比較を行った。その結果、モデルは人為起源温暖化の影響を過小評価気味であることが分かった。また「日最低気温の年間最高値」および「日最高/最低気温の年間最低値」に統計的に有意な人為起源温暖化の影響が見られることがわかった。冬日日数の減少にも人為起源の影響が検出された。さらに、エアロゾルによる冷却効果が温室効果ガスによる影響を半分近く相殺していることも分かった。このことは,近い将来にエアロゾルの排出削減が急速に進んだ場合,気温の極端現象により大きな変動が現れることを示唆している。 来年度は、上記の結果をふまえて、モデルの再現性の良い極端現象に関して、将来予測を行う。
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