東シナ海および西部熱帯太平洋に注目して、夏季モンスーン期の降水系について内部構造、維持過程などを調べた。まず、東シナ海については、2004年に実施された観測で取得したゾンデやレーダーのデータをもとに梅雨前線上の降水系を調べた。通常、梅雨前線は同じ緯度に停滞する性質があるとされてきたが、実際には前線が南下していても常に北側に新しい前線構造を作り出し、その結果あたかも停滞しているかのように見えている、というメカニズムもありうることが明らかになり、その結果をまとめた論文は2006年度に出版された。 一方、西部熱帯太平洋については、ニューギニア島付近で発生して、その後800kmもの距離を北進した降水系の北進メカニズムについて調べた。この降水系は、ニューギニア島から吹く陸風(夜間に陸が海よりも相対的に冷たく高圧になると陸から海に向かって吹き出す風)による前線上で形成したが、通常の陸風は、島の海岸から800kmも伝播することはない。しかし、島の北側に偏東風波動とよばれる熱帯域における低気圧が存在しているときには、その低気圧の中心に向かって通常よりも強い北向きの風をもたらす力が働き、その結果800kmもの長距離北進が可能になった。この内容については、論文にまとめ来年度中に印刷される予定である。 上記のように今年度は、二つの異なる地域において性質の違う前線構造に伴う降水系を詳細に調べた。今後これらの共通点・相違点を比較しながら地域特性を示していくためには、降水系を再現するための数値モデルの整備が必要である。その一環として、通常のモデルよりも地表面における扱いを非常に詳細に扱った数値モデルの開発を進めた。それを用いた一部の成果は2006年度に論文として出版され、現在投稿中の論文も2007年度中に出版される予定である。
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