研究課題
本年度は、前年度までに確立した観測データの有無による全球気象予報・解析における影響評価の手法を応用した課題に着手した。全球気象モデルにおいて西部熱帯太平洋域の観測データの有無によるインパクトを調べた。その結果、この領域の風の場が、梅雨前線付近の風の場に対して明瞭なインパクトを持っていることが分かった。このような事実は、これまで長らく間接的に示唆されてきた日本の気象・気候の理解における西部熱帯太平洋上の対流系研究の重要性を改めて直接的に示している。同様の取り組みをインド洋上で2006年に取得された観測データに対しても適用した。その結果、インド洋上の大気場が、赤道ケルビン波を通じて西太平洋上の大気場に対して明瞭なインパクトを持っていることが分かった。特に、その影響は、西太平洋上で台風が発生・発達する際により強く現れており、ひいては日本付近の大気場にもインド洋上での観測の影響が及びうることが示された。こうした解析により、東アジアの各地域で様々な特性を持つ降水系の観測データは、それぞれの経路や伝搬過程を経て日本付近に影響を及ぼしていることが本研究によってまとめることができた。このような知見は、将来のより効率的・効果的な観測を実施するための戦略において貢献するものであり、一部実際の観測戦略立案に生かす試みも始めることができた。今後の戦略においては、本研究で主な対象としたインド洋・西部熱帯太平洋・東シナ海といった領域を含め、継続・追加しなければならない観測の具体的内容を国際的に訴えていくことが求められる。
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