地球温暖化に伴う海面水位の変化は人間社会や環境に大きな影響を与えると予想されている。しかしながら、従来の温暖化予測のための海洋大循環モデルは海洋の熱膨張を陽に扱っておらず、モデル内の海水温度や塩分濃度の変化から海水の膨張による海面水位の変化を見積もっていた。本研究では気候モデルにおける海洋の膨張を陽に扱うモデルを構築するため、様々なモデルの検討を行った結果、Greatbatch et al.(2001)による非ブシネスク近似を緩和する方法が、従来の気候モデルの枠組みにおけるモデルの改良に最も適しているという結論に達した。そこで、東京大学気候システム研究センターの海洋大循環モデルをべ一スに、海洋モデル内で熱膨張を陽に扱えるようにGreatbatch et al.(2001)の手法を取り込み、モデルの改良およびコードの変更を行った。さらに、気候値の外力を加えてこのモデルを駆動し、気候場、季節変動などの再現性の確認を行い良好な結果を得た。また、モデルの計算時間も従来のモデルに比べ20%増程度におさえることができた。開発した海洋大循環モデルは温暖化時の熱膨張による海面水位上昇を解析するために役に立つと考えられる。この海洋大循環モデルを用いて海面水位上昇の予測を行うため、淡水流入量を含む温暖化時の海洋の境界条件のデータの収集等を行った。また、山岳氷河融解などによる淡水の海洋への流入による海面水位上昇に関しての調査・検討も合わせて行った。
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