研究概要 |
本研究課題の目的は、極域電離圏及び磁気圏で観測される極風(ポーラーウィンド)の生成機構の解明である。極風が生じ始めると考えられる極冠域の上部電離圏(500-1,500km)におけるイオン組成の高度分布と各イオン種の速度分布をEISCATスヴァールバルレーダー(ESR)を用いて詳細に調べるため、ESRを利用した新たな観測や解析手法を2006年度に開発・改良後、2007年06月から2007年12月にかけてESR観測を計40回実施した。その内2007年6月24日から9月20日までのESR観測データ(26イベント)を用いた初期解析の結果、 (1)酸素イオンに対する水素イオンの比率は、高度400-600kmでは、モデル(IRI2001)値に比べて観測値の方が大きいこと(約3倍以上)、 (2)そのイオン組成の比率は、酸素イオン上昇流発生時(地磁気擾乱時)もそれほど変化しないこと、 (3)酸素イオンの沿磁力線速度が数10ms^<-1>の小さい場合にも、水素イオンの沿磁力線速度が数100ms^<-1>に達するイベントが幾つか存在すること、 等の観測事実を明らかにし、これらの成果を2007年9月に開催された地球電磁気・地球惑星圏学会で発表した。さらに、2005年から2006年に得られたれいめい-ESR同時観測イベントを用いて、昼側カスプにおける熱的イオン上昇流と超熱的イオンの関係を調べた研究成果を学術論文に発表した(Ogawa, et. al., 2008)。
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