木星の衛星イオの火山性ガスを起源とするイオプラズマトーラス中の複数イオン種からの発光を、広い波長領域にわたり分光観測する必要があるため、市販の低分散回格子分光器、及び冷却CCDを入手した。波長校正ランプを用いた性能評価の結果、観測に必要とする波長域をおおむねカバーできることが確認できた。これらを28cmシュミットカセグレン式望遠鏡と組み合わせ、ドイツ式赤道儀に取り付けることで、天体観測が可能な状態となっている。 木星と地球の軌道位置関係の問題から、当初の予想通り装置一式(シュミットカセグレン式望遠鏡、ドイツ式赤道儀、回折格子分光器、冷却CCD、波長校正ランプ)の準備が全て整った平成18年8月には、イオプラズマトーラスの観測に適した時期(4月から7月程度)はすでに過ぎていたそのため平成18年度はイオプラズマトーラスの本観測には至ってはいないが、他の天体を対象とした試験観測から、イオプラズマトーラス中のイオン発光のうち、いくつかは検出可能であることが確認できた。当初の計画では、。東北大学飯舘観測所60cm望遠鐘を利用した試験観測も予定していたが、研究代表者の異動(立教大→鹿児島高専)に伴い、その実現はほぼ不可能となった。 なお、平成19年3月現在、木星観測時期を迎えつつあり、6月を中心にした前後3ヶ月間程度の本観測期間を前に、明け方に東の空に現れる実際の木星を用いて試験観測を行う準備が整っている。
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