研究課題
本年度は、沈み込み帯深部において脱水反応によって生成された流体が、周囲の岩石とどのような相互作用をするかと周囲の岩石の脆性破壊の結果である亀裂中の流体移動について野外調査と流通式反応実験により明らかにした。【関東山地・長瀞地域の三波川帯鉱物脈の解析】脱水反応による流体は沈み込み帯の地殻深度では岩石中に亀裂を発生させ、鉱物脈として記録される。沈み込み帯の情報を記録する三波川帯に発達する鉱物脈の解析を行い、(1)形成条件が200-400度、1-4kbarであること、(2)形状、内部組織、鉱物種から3タイプが存在することを明らかにした。TypeIとTypeIIは石英+曹長石+緑泥石+カリ長石からなり、母岩の鉱物から成長する。TypeIIは石英+曹長石+方解石からなり、微結晶により充填され、その空間分布は母岩の鉱物分布とは無関係である。これらの系統的な関係により、TypeIとIIIは、物質移動はそれぞれ母岩からの元素拡散と流体の移流によって支配されていることが明らかになった。【流通式反応実験による石英脈合成]高温高圧環境下(200-430度、30MPa)においてSiに過飽和な溶液を流すことにより、岩石基盤上に石英を析出させることに成功し、その反応速度解析を行った。また、その析出様式は、同じ温度条件下(430度)における析出でも、平衡に近い溶液からは基盤岩石中の石英の上にのみ成長するのに対して、過飽和度が高い条件(C/C_<eq>>3)では流体中で核形成が起こり成長するということを明らかにした。このことは、三波川帯のTypeIIIの鉱物脈がよりSi濃度の高い流体が深部から運ばれてきたこと、すなわち、地殻深度における主要な流体移動の流路であったことを示唆する。
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Journal of Structural Geology 29
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Contributions to Mineralogy and Petrology