研究課題
本年度は、南中国の三峡地域、瓮安地域や雲南地域で630MaのMarinoan全球凍結からカンブリア紀初期の地層の地質調査と試料採取を行った。三峡地域では原生代-カンブリア紀(PCC)境界の環境変動と生命進化を詳細に調べるために境界を挟む約50m厚分の地層を陸上掘削し、きわめて良好な試料をほぼ完全連続で採取することができた。瓮安地域では、世界最古胚化石を含む岩石を大量に採取するとともに、来年度に行う陸上掘削の候補地を選定した。また、これまでに採取したPCC境界付近の掘削試料の炭素、酸素とSr同位体分析を行った。その結果、原生代末からカンブリア紀初期には2回の炭素同位体負異常が存在することがわかった。最初の負異常の最小値の地層はカンブリア型の小売化石(SSF)の出現の地層と一致する。また、負変動の開始の時期は、エディアカラ動物群の急激な衰退の時期やSr同位体の上昇の開始の時期と一致する。以上の結果は、PCC境界における環境変動と生命進化に関して以下のシナリオを与える。すなわち、原生代末に固体地球に関連した環境変動が起り、Sr同位体の上昇が起こり、その環境変動によって、生命の一次生産が低下し、炭素同位体比が急減する。カンブリア紀になり、カンブリア型生命の出現と繁栄に伴い炭素同位体比が回復した。本研究により、原生代末からカンブリア紀初期に固体地球による環境変動が起り、その結果エディアカラ動物群の絶滅とカンブリア型生物の出現が起きたことが初めて実証的なデータに基づき立証された。二度目の炭素同位体の極めて大きな負異常は酸素同位体比の負異常、Ce異常の減少とトモチアン型のSSFの絶滅の時期と一致する。また、海退による不整合が本研究地も含め半世界的に見られる。以上の結果は、この時期に海退に伴い、メタンハイドレートが分解し、メタンが放出され、超温暖化になり海洋酸素濃度が低下して生命が絶滅した事を示す初めての証拠である。
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