研究概要 |
これまで陸上における気候変動研究の多くは、過去の生態系情報に基づくか、非生物的指標であっても気候的な数値化がされない定性的な気候復元が主であった。本研究では、生態系情報を使わず陸域気候変動を推定する有効な方法として、湖沼堆積物の珪藻殻などの珪酸塩鉱物と炭酸塩鉱物の酸素同位体比に基づく気候復元伝を確立することを目的としている。 これまでの2年間において、珪藻殻や珪酸塩鉱物の酸素同位体比分析についてフッ素酸カリウムとフッ化コバルトを用いて反応させる分析システムの作成をおこない、さらに珪藻殻試料の前処理法について、殻を構成する二酸化ケイ素に結合する水和物の除去について高温での加熱法に取り組んだ。平成20年度においては、珪酸塩の酸素同位体比分析を古環境復元における実用に適する程度へ分析精度を高めるため、反応管や真空ライン中へ分析時に混入するガスの減少や、試料の反応率と回収率の向上を目指し、分析システムの部品の変更と分析手順の改良に取り組んだ。さらに、湖沼堆積物中の炭酸塩鉱物の酸素同位体比分析に基づく水温復元を目指し、新たな温度指標として提唱された炭素・酸素濃集同位体比を用いた、外来性・内来性炭酸塩量の構成比の見積もりに取り組んだ。モンゴルのフブスグル湖で採取された過去25,000年間の堆積物について、含有カルサイト量と炭素同位体比、濃集同位体比の分析を行い、最終氷期には全炭酸塩量の約2/3が外来性であると見積もった。これらの成果について国際アイソトポマーシンポジウムにおいて発表をおこなった。
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