研究概要 |
日本列島の基盤の大部分は付加帯及びそれらが沈み込みによって変成された変成帯によって構成されている。これまで付加体部分に対して砕屑性ジルコンの年代測定を行ってきた。その結果,三郡変成岩の300Ma変成帯である三郡-蓮華帯の砕屑性ジルコンの年代構成が約100km南に離れた木山変成岩と似通っていることが判明した(学会発表準備中)。また,三波川変成帯の最も若い砕屑性ジルコンが後期白亜紀を示したことから,三郡変成岩の原岩が四万十帯と時代的に同じであることが明らかになった(学会発表済み・論文投稿中)。これらの事実は,日本列島の構造を考える上で非常に重要な証拠となりうる。具体的には,木山変成岩は三郡-蓮華帯のクリッペ的成分であり,三波川変成帯は変成を受けた白亜紀付加体(四万十帯と同一成分)が地表に現れたものであると考えることができる。その事実を認定すれば,日本列島の形成史を大幅に単純化できる上に,多くの矛盾を解消できる可能性がある。 一方で,飛騨地域は日本列島に付随してきた大陸地殻の成分とされ,朝鮮半島との地質的関係が古くから指摘されてきた。その中でも宇奈月地域は大陸衝突の痕跡と考えられる中圧変成岩を産し,朝鮮半島の沃川帯と対比されてきた。この宇奈月の変成岩の中圧変成の年代は詳しくは不明であったが,この度得られたジルコンの年代により,従来よりも遥かに狭い範囲でこの中圧変成年代を制限できる可能性を得るに至った。この結果については近く公表の予定である。
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