研究概要 |
本研究の目的は,琉球列島及びグレートバリアリーフに広がるサンゴ礁とその周辺堆積物が,第四紀中期のどのタイミングで,どのような海洋表層環境(特に水温)の変動が原因でサンゴ礁の成立、拡大が促されたのか,高精度マイクロミルシステムを用いた微小領域解析によって検証することにある。本年度は大きく下記の2つの成果が得られた。 (1)微量粉体回収装置の開発とその応用 前年度に開発・改良を行ったマイクロミルシステムを使用するにあたり,切削した微量のサンプルをいかにして分析のための容器に移すのかが問題となった。そこで,分析用容器に微量サンプルを採取するための「粉粒体回収装置」を開発し,特許出願も行った,本装置を用いると数マイクログラム以上の粉体をほぼ100%の回収率で採取することが可能である。この新しい技術によって,マイクロメートル単位の微小領域からの粉体サンプルの回収が安定して確実に実施できるようになった。 (2)古水温指標としての浮遊性有孔虫のMg/Caの保存性の検討 前年度に引き続き,浮遊性有孔殻のEPMAによるMg・Caのマッピングとその定量を実施した。前年度の研究により,陸水性続成作用を被った石灰岩中の浮遊性有孔虫殻のMg/Caは,その初生値を保存していることが示唆されたことを踏まえて,琉球層群のコア試料CR-13を用いて「固結した石灰岩を研磨した試料」および「未固結部から摘出した浮遊性有孔虫試料を樹脂に埋めて研磨した試料」について,(1)高精度マイクロミル装置による浮遊性有孔虫殻の切削を実施して酸素、炭素同位体比の測定,(2)EPMAによる浮遊性有孔虫殻のMg、Caのマッピングとその定量,を順次実施中である。
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