平成18年度は、主に1.ナクライト火星隕石の鉱物学的分析と2.導入した赤外顕微鏡の調整を兼ねた含水鉱物の分析を行った。 1.光学顕微鏡、走査電子顕微鏡を用いてナクライトの薄片試料を観察し、水質変成物の化学組成をエレクトロン・マイクロプローブで分析した。存在した水質変成物は、イディングサイトと呼ばれるものであり、カンラン石やメソスタシスの割れ目に沿って普遍的に存在していた。水質変成物の量、化学組成が各隕石でどのように異なるかを検証したが、これまでに見つかっているナクライトでは有意な差は見られなかった。また、ナクライトの形成深度について詳細な考察を行い、表層から、MIL03346、NWA817、Y000593、Nakhla〜Governador Valadares、Lafayette、NWA998の順番に深いところに位置していたことを多くの鉱物化学分析・観察から明らかにした。また、その深度は、カンラン石の化学的ゾーニングの度合いから、MIL03346とNWA817が表層付近約2メートル前後、Y000593、Nakhla、Governador Valadaresが約10メートル、そしてLafyetteとNWA998が30メートル以上と示した。同時に、ナクライトが結晶化した際の酸素分圧についての見積もりを行い、QFMバッファー付近で平衡化したという結果を得た。 2.また、赤外顕微鏡を用いて代表的な含水鉱物である角閃石の顕微分光分析を行った。用いた試料は、RコンドライトLAP04840中に含まれるホルンブレンドで、3600-3700cm^<-1>付近に水による顕著なピークを検出することができた。この結果、この隕石は、母天体の深いところで高温・高圧の水熱変成を受けたことが明らかになった。 3.シャシナイトについても水質変成の証拠を探したが、水質変成物質は見つけることができなかった。
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