研究概要 |
統合国際深海掘削計画(IODP)304/305次航海により,大西洋中央海嶺北緯30度に存在する海洋コアコンプレックス(OCC)であるアトランティス岩体から採集された海洋底の岩石,特にかんらん岩類について集中的に解析を行ってきた.岩石試料から薄片を作成し顕微鏡観察を行い,個々の試料の造岩鉱物を鑑定した.各鉱物の主要元素組成,微量元素組成を決定した.測定にはそれぞれEPMA,LA-ICP-MSを用いた.詳細な記載岩石学的および地球化学的データにもとづき,かんらん岩の起源および関係するマグマプロセスについて検討した.アトランティス岩体を構成するかんらん岩は複雑な形成過程を経験しており,溶け残り岩(上部マントル)およびマグマ集積岩(地殻)に由来するものが混在していることを明らかにした.溶け残り岩の特徴として,これまで大西洋中央海嶺から得られるものとしては,部分溶融の程度が比較的高いものであることがわかった.また,より最近の文献の調査を行い,様々な地域の中央海嶺から得られたかんらん岩の新しい研究データのコンパイルを行った.これをもとに,中央海嶺における上部マントルの性質の地域性と海嶺セグメント内での多様性について詳細な議論をした.本研究で示したかんらん岩の特徴とその生成過程は,OCCの形成過程と海嶺セグメント内におけるマグマの移動の理解に重要な情報を与える. 以上の成果は,IODP304/305次航海ポストクルーズミーティング(9月,ハワイ)において発表した.また,国際誌(Tamura, et. al.,2008,裏面参照)に論文として公表した.
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