高融点半導体材料に対してアニール処理を同時に行えるパルスイオン注入の実証実験を行うためには、ビーム電流密度が50A/cm^2以上の高純度・高強度パルスイオンビームが必要である。本年度はパルスイオン注入に必要なイオンビーム電流密度を得るために、パルス電圧源部の改良を行い、高純度イオンビームの高強度化を行った。それと同時に、YAGレーザーを利用したプラズマ測定システムの構築を行った。まず、パルス電源として定格電圧240kV、定格電流15kA、パルス幅100nsの低インダクタンスのマルクス発生器を製作し、電源の性能評価を行った。短絡試験において短絡電流32kA、回路インダクタンス190nHという結果を得た。次に、開発したパルス電源をパルスイオンビーム発生装置(磁気絶縁型イオンダイオード)に組み込み、イオンビーム電流の特性を測定した結果、ダイオード電圧190kV、ダイオード電流15kA、パルス幅(半値幅)100nsの時、陽極から下流55mmの位置においてイオン電流密度54A/cm^2のパルスイオンビームを観測でき、パルスイオン注入実験に必要な電流密度を達成することができた。また、トムソンパラボラ分析器により、得られたイオンビームのエネルギーやイオン種の評価を行ったところ、主成分は窒素イオンビームであるが、プロトンの成分も含まれていることが分かった。今後、ビーム純度向上に向けプロトン発生源の特定、及び開発した測定システムを組み込み、パルスイオン注入の実証実験を行う。
|