研究概要 |
近年,核融合実験装置内で発見されているカーボンダストは,トリチウムを吸蔵し装置内に残留するため問題視されているものの,不明な点が多い.本研究の目的は,申請者が開発したダイバータ模擬実験装置を用いて,軽水素および重水素プラズマとカーボン壁の相互作用により発生するカーボンナノダストへの水素吸蔵量を定量評価するとともに,カーボンナノダストの発生・成長に対する同位体効果を定量的に明らかにすることである.今年度は以下の成果を得た. 1.核融合実験炉の周辺プラズマのモデル実験のため,15kWの高周波電源を用いた高密度ヘリコン波プラズマ実験装置を用いて重水素プラズマを生成した.イオン密度4×10^<12>cm^<-3>,電子温度5〜10eVと核融合実験炉内の周辺プラズマに近いパラメータを実現した. 2.重水素ヘリコンプラズマ-カーボン壁相互作用で発生したダストを採取して,SEM・TEM観察した.水素プラズマ-カーボン壁相互作用で発生したダストと同様に,1nm〜1μmのサイズのダストが多数存在し,サイズ分布はJunge分布であった. 3.モデル実験と比較する目的で,核融合実験炉におけるダスト生成について検証するために,核融合科学研究所のラージヘリカルデバイス(LHD)の第8及び第9実験サイクル終了後に,LHD内の数箇所に亘ってダストを採取し,そのサイズ,数密度,組成を調べた.結果は次の通り.(1)4つの形状タイプのダストが3つの捕集法により観察された.(2)球状,フレーク状のダストが全ての方法で観察された.主放電時のその場捕集では,凝集形状のダストが得られたが,グロー放電時のその場捕集では得られなかった.凝集形状のダストは主放電時に形成されたことを示唆している.(3)堆積形状のダストはその場捕集法でのみ得られた.これはカーボンダストが気相中で溶けて,壁へ飛来したことを示唆している.
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