レーザー核融合爆縮で重要なクライオジェニックターゲット爆縮において、高速電子による爆縮中のターゲットの先行加熱を評価するため、フォッカープランク方程式に基づく非局所電子熱伝導計算コードを開発し、爆縮統合爆縮コードと結合させる事により、爆縮中の非局所電子熱伝導を計算した。まずフォッカープランク方程式に基づく非局所電子熱輸送計算の有効性を確認するため、計算で求められたレーザー吸収率と実験で測定された値との比較を行い、実験の誤差の範囲で実験の吸収率を再現することが判った。従来より爆縮中の熱流計算に用いられてきたFlux-limited Spitzer-Harmモデルに基づいてflux-limiterを可変させた場合の計算ではある時刻の瞬間においてフォッカープランクモデルの計算と一致させることが可能であるが、熱流の時間変化を単一のflux-limiterで再現することが出来ず、時間依存で考える必要がある事が判った。また、米国ロチェスター大学レーザーエネルギー学研究所で開発されている時間依存非局所輸送モデルとの比較を行い、爆縮パルスの主要部分(ピーク付近)においてはほぼ同様の熱流が得られるものの、パルスの立ち上がり部分については両者の違いが大きく、非局所モデルの適用範囲、有効性、並びにフォッカープランク方程式に基づく非局所熱輸送モデルの精度を検証していく必要があることが判った。以上の比較からクライオ爆縮におけるフォッカープランク方程式に基づく非局所電子熱伝導の有効性を確認した。その上で大阪大学レーザーエネルギー学研究センターで行われた爆縮中の先行加熱を評価する実験の解析を行った。阪大の実験では輻射輸送の影響が大きいことが見いだされたが、先行加熱量は温度にして数eVの範囲に収まっていると見積もられた。
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