平成19年度の活動状況を、本申請課題で計画した問題「1.多重楕円ガンマ函数やそれと関連する函数の保型性」、「2。直交多項式の構造を記述する代数構造」に則して総括すると、以下のようになる。 1.Barnesの多重ガンマ函数の漸近展開を用いたGauss積、Euler積などの無限積表示の証明をまとめた論文を執筆中で、現在、その完成を急いでいる。また、この無限積表示からの着想で、Barnesの多重ガンマ函数のq-類似の定義を与えることが可能であるという見通しが立ち、現在、その計算を遂行中である。ここでのq-類似の定義は、古典極限が厳密に一致する形であるため、q-特殊函数論的な視点からみると興味深いものと期待される。 2.多変数continuous Hahn 多項式や、shifted Koornwinder多項式などの多変数直交多項式を、楕円ヘッケ代数のパラメタを退化させた代数の表現論を用いて解釈するための試みも継続して行っている。(立教大学の筧三郎氏、東京大学の斉藤義久氏、筑波大学の竹山美宏氏との共同研究)。 今年度は、これらの活動のために、京都大学での表現論、可積分系の研究集会への参加、東北大学での量子可積分系に関する集中講義の聴講、共同研究者とのディスカッションのための東京方面への出張を行った。課題を考察する上での具体的なステップを設定し、それらに対してある程度のアプローチを行い、成果を導くための見通しを作ることができたといえる。
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