研究概要 |
星間ガスは通常外部から加熱され、また輻射を外部に放出することで自身は冷却する、非平衡開放系の流体である。加熱・冷却のプロセスから幾つかの相に分離しているが、本研究で考察しているのは、温度T〜10^2K,密度n〜10cm^<-3>程度の冷たいガス(Cold Neutral Medium ; CNM)と、T〜10^4K, n〜0.1cm^<-3>程度の暖かいガス(Warm Neutral Medium ; WNM)である。これらの相は、加熱と冷却の釣り合いより定まる安定な熱平衡状態に対応している。二つの相の界面では、温度の異なるガスが接触しているため、熱伝導によりWNMからCNMに向かって熱が輸送される。系全体として加熱・冷却の収支が合っていなければ、どちらかの相のドメインが成長することになる。 本研究では、WNM相の中に球対称のCNM相の雲を置き、これがどのように蒸発・凝集するかを調べた。まず動径方向の進化を解く非定常の数値シミュレーションを行い、現実的な加熱・冷却の状況で、どれくらいのタイムスケールで蒸発・凝集が起こるのかを、外圧をパラメータとして調べた。その結果、通常の外部加熱がある状況では、雲のサイズが0.01pc程度の場合、外圧にあまり依らず、1Myr程度で蒸発することがわかった。また0.1pcを超えるようになると、外圧の違いがタイムスケールを大きく変え、圧力が高い場合は凝集に転ずることも分かった。 半解析的に系を表す方程式系を解くことにより、蒸発過程は雲の表面の曲率に依存する項と外圧に依存する項に分離できることがわかった。雲のサイズが小さい場合は曲率項が卓越し、外圧にはあまり依らない。サイズが大きく外圧が高いと、曲率項による蒸発を外圧による凝集が凌駕し、全体として凝集が起こることもわかった。
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