研究概要 |
密度の低い星間ガスは外部からの紫外線などにより加熱され、また輻射を外部に放出することで自身は冷却する、非平衡開放系の流体である。加熱・冷却のプロセスから幾つかの相に分離しているが、本研究で考察しているのは、温度T〜10^2K,密度n〜10cm^<-3>程度の冷たいガス(Cold Neutral Medium; CNM)と、T〜10^4K,n〜0.1cm^<-3>程度の暖かいガス(Warm Neutral Medium; WNM)である。これらの相は、加熱と冷却の釣り合いによる安定な熱平衡状態に対応している。二つの相の界面では、温度の異なるガスが接触しているため、熱伝導によりWNMからCNMに向かって熱が輸送される。系全体として加熱・冷却の収支が合わなければ、どちらかの相のドメインが成長することになる。 本研究では、WNM相の中に球対称のCNM相の雲を置き、これがどのように蒸発・凝集するかを調べた。非定常の数値シミュレーションにより,雲のサイズが0.01pc程度では,およそ1Myr程度で蒸発することがわかった。また外圧が高いと凝集に転ずることも示された。また半解析的な手法で蒸発率についての公式を導くことにも成功した。 さらに応用として,銀河進化において星間ガスがどのような影響を及ぼすかについて調べた。特に高赤方偏移で発見されているLyα輝線天体は,銀河内ガスの高速噴流を考えると,銀河形成モデルから得られた星形成率をもとに観測をよく説明することが分かった。
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