研究課題
特別研究促進費
改良ラグランジュ平均(MLM)とは、断熱保存量である渦位・温位を南北・鉛直座標に用いることで、保存過程(波動伝播等)と非保存過程(放射・摩擦等)を陽に分離する手法である。MLMでは渦位の等値線に沿っての平均を用いるため、帯状平均では失われる極渦境界領域の急峻な構造を表現することができる。また、MLMは可逆的な波動平均流相互作用の影響を受けないため、時間的な平均操作をせずに不可逆な時間変化のみを取り出すことができ、大気循環場の不可逆な時間発展を記述するのに適している。本研究ではさらに、非保存過程を放射等に伴う非断熱過程とプラネタリ波砕波等に起因する摩擦過程に分離し、それぞれの寄与について議論した。気象研/気象庁大気大循環モデルを欧州中期予報センター(ECMWF)客観解析データでナッジングして得られた現実的なデータにMLMを適用した。その結果、従来の変形オイラー平均解析ではプラネタリ波砕波に伴う断熱的な昇温現象として捉えられていた成層圏突然昇温において、放射に伴う非断熱過程がプラネタリ波砕波に伴う摩擦過程と同程度に極渦の衰退に寄与することがわかった。また、物質や運動量の南北方向の輸送・混合を定量的に評価するため、改良ラグランジュ平均に基づく輸送・混合の新たな診断手法の開発を進めている。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Journal of the Atmospheric Sciences 63 (12)
ページ: 3315-3332
Geophysical Research Letters 33
ページ: doi:10.1029/2005GL024002