研究概要 |
巨大サイズクラスターの効率的な生成方法を模索している段階で、計画当初に想定していた水よりも、アンモニアの方がクラスターサイズや相状態の制御が容易であることがわかってきた。そこで、巨大アンモニアクラスターの生成法制御の確立、及び赤外キャビティリングダウン分光によるNH伸縮振動の観測を行い、水素結合構造、及び相状態についての解明を行った。以下に、詳細を述べる。 (1)クラスター生成は、スリット型、ピンホール型の二種類のパルスノズルによる超音速ジェット法により行った。後者の方が前者よりもジェット冷却効率が良いことから、サイズの大きいクラスターの生成が容易であることがわかった。UBuckらのフラグメント赤外分光の結果と比較すると、スリット型で生成されるクラスターの上限サイズは約100量体、ピンホール型での上限サイズは約1000量体であることがわかった。 (2)アンモニアクラスターの赤外スペクトルを測定すると、低波数側のモード1、高波数側のモード3が主に観測される。ジェット条件を変えてクラスターサイズを増加させると、モード1に対するモード3の吸収強度比が急激に増大し、更にモード3のバンド幅が減少していくことが観測された。これは、クラスターが1000量体程度の巨大サイズに成長すると、水素結合構造が固体結晶のような一定方向へ配列したような構造になることを示唆する結果である。 (3)赤外分光により得られたモード3の狭帯化を理論的に説明するために、GAUSSIANプログラムを用いた量子化学計算(HF/6-31+G(d,p))を行った。7、19、31量体の安定構造を結晶配位に基づいて計算し、その基準振動を求めたところ、上記のような小さいサイズにおいても、狭帯化を再現する興味深い結果が得られた。
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