研究概要 |
超強磁場中における原子・分子の電子構造および反応ダイナミクスを解明することを目的とした理論研究を行い,本年度は以下に示す成果を得た. 1.非等方高L値ガウス型基底関数を用いた分子積分プログラムの開発 通常の量子化学計算においては,球形ガウス型関数が基底関数として用いられ,基底関数の角運動量の最大値はL=6(i関数)程度に限られている.一方,超強磁場中においては,分子の電子雲は磁場の印加軸周りに大きく収縮し強い異方性を示す.このため,超強磁場中における原子・分子の電子状態を適切に表現するためには,非等方かつ高いL値を持つ基底関数系を用いる必要がある.研究代表者が近年開発を行った「非等方ガウス型関数系」を用いた分子積分計算コードを拡張することによって,L=15までの非常に高い角運動量関数を用いて1×10^<-13>の高精度で1電子積分および2電子積分を計算する分子積分プログラムを開発した. 2.擬1次元ナノ空間に拘束された複数電子のエネルギー構造 上で開発したコードを用いて,ガウスポテンシャル中に閉じ込められた複数電子のエネルギースペクトルおよび波動関数を,配置間相互作用法を用いて計算した.計算した各エネルギー準位について,多体波動関数の節の数によって定義されるポリヤッド量子数を調べた結果,エネルギー準位はポリヤッド量子数によって特徴付けられるバンド構造を持つことが示された.また,ガウスポテンシャルの非調和性が大きい場合には,電子の運動は互いに非結合化した局在振動を示すことが見出された.
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