本研究は、SPring-8放射光の1)高輝度性2)平行性3)高コヒーレンス性を最大限に利用し、サブμm角の極微小単結晶X線構造解析法を開発することを目的としている.具体的には軽原子のみからなる有機化合物では1μm角、遷移金属錯体・無機化合物ではサブμm角の単結晶1粒からの構造決定を目指す. 本年度は、さらなるS/Nの向上により、達成していない1μmの有機化合物結晶の構造解析を可能にするとともに、相転移、光誘起を示す化合物の転移前後の構造変化を精度良く解析することを目的とした.以下に研究結果を示す. まず、S/N比の向上を図るため、微小単結晶構造解析装置の改良を行った.また、検出器の調整方法を見直し、前年度測定を可能にした500nmφの無機化合物結晶の信頼度因子を6%から4%台に向上させることができた.また、空気散乱を抑えることにより、同化合物の100nmφ試料からの回折X線を得ることに成功し、その有効性を示した. 1μmの有機化合物結晶の構造解析においては、高輝度な集光X線のために試料が放射線劣化してしまうことが明らかとなり、その対策法の開発を優先して行った.相転移や放射線ダメージによって劣化してしまう結晶に対し、結晶を動かしながら常に劣化ダメージの少ない箇所の測定を可能にする微小単結晶構造解析装置のプログラムを作成した.そして、放射線で瞬時に劣化してしまう1μmの有機物針状結晶からの回折強度測定に成功した.また、結晶のサンプリングを迅速に行うため、新しいマウントホルダの開発とそれを利用した測定実験を行った.
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