研究概要 |
フラーレンC_<60>および窒素原子を有するヘテロフラーレン合成を指向し研究に取り組んだ。合成の最終段階において、対応する炭素数(および窒素数)の前駆体を真空熱分解することを計画した。C_<60>の部分構造であるC_<3v>,対称なボウル型分子スマネンに着目した。対応する前駆体を合成するためには、スマネンのベンジル位に種々の置換基を導入する方法論の開発が必要である。そこで、スマネンの芳香族部位への置換基導入やベンジル位の酸化反応を種々検討した。また、ヘテロフラーレン合成を指向し、窒素原子が導入された誘導体合成にも取り組んだ。 スマネンの芳香族部位にブロモ基、ニトロ基、アシル基をそれぞれ導入することができた。ブロモ化スマネンをパラジウム(O)触媒存在下、2-ホルミルフェニルボロン酸とクロスカップリングすることでベンズアルデヒド部位を導入した。得られたアルデヒドを強塩基で処理することで、スマネンのベンジルアニオンとアルデヒドが分子内反応し、高歪み分子が合成できることを見出した。この方法のコンセプトはさらに大きな湾曲を持つフラーレン類合成にも応用できると考えられる。ペンシル位の酸化についても種々検討した結果、スマネンを酸化クロム(VI)で処理した時に中程度ながら目的とするスマネントリオンを得られた。このトリケトンはグリニアール試薬やヒドリドと容易に反応した。また、アニリン類と縮合することで、対応するスマネントリイミンが合成できた。このように含窒素バッキーボウルが容易に得られるため、本手法は当該分野において汎用的な合成法として位置づけられると考えられる。
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