本研究では、われわれがこれまでに効率的な合成方法を開発してきた、らせん型化合物ヘテロヘリセンとDNAとの相互作用に関して調べ、新規な物性の発現を目指すことを目的としている。本年はヘテロヘリセン誘導体のテロメラーゼ阻害活性について研究を行った。 DNA末端に存在するテロメアやテロメアを延長する酵素であるテロメラーゼは、細胞の老化や不死化に対して重要な役割を担っており、ガン化にも密接に関連していると考えられている。ヒトテロメア配列のGカルテットの複合体を安定化する小分子はテロメラーゼの作用を阻害するため、副作用の少ない抗ガン剤への応用が期待されている。 これまでのわれわれの研究で、光学活性な環状型ヘテロヘリセン分子の合成法について開発し、すでに報告をしているが、この分子がエナンチオ選択的にGカルテット構造間にはまり込んで結合し、エナンチオ選択的にテロメラーゼ活性を阻害する事を新たに見出した。より阻害活性の高い左巻きのエナンチオマーのテロメラーゼ阻害活性については、最強の阻害活性を持つと言われているテロメスタチンの20%程度であり、新たな抗ガン剤の有望なリード化合物となると期待される。 ヘリセン部位の両末端を結ぶスペーサーを長くして、らせんピッチを広くすると、阻害活性が顕著に減少することから、現時点ではらせんのピッチが狭く、環状化合物であることが重要であると考えている。しかし、構造と活性の相関について詳細は不明であるので、今後検討していく予定である。
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