申請者らが近年展開している、低原子価ニオブを触媒とする炭素-フッ素結合活性化反応について、重水素化実験等を行い、その反応機構の解明を行った。その結果、トリフルオロトルエン誘導体と低原子価ニオブから、還元的にフッ素置換ニオブカルベノイド種が生成しているとの知見を得た。 フッ素が置換したカルベノイド種は、その生成法が確立ざれていなかった、こともありこれまであまり有機合成化学の分野において活用されてこなかった。昨年度までの検討で、この活性種が分子内に存在するさまざまな炭素一水素結合に挿入を起こすという知見がすでに得られている。今年度の検討によって反応活性種の構造が明らかとされたことにより、有機合成化学の分野に低原子価ニオブを新しい合成ツールとして確立することができた。
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