研究概要 |
キャピラリー電気泳動-レーザー励起蛍光検出システム(CE-LIF)に金属イオン検出用蛍光プローブを3種類適用した(うち2種類は新規合成).これらの蛍光配位子は,発光部位にフルオレセインを,配位部位にポリアミノカルボン酸骨格を有しており,両部位をスペーサーで結合している.このスペーサーの長さによって,金属錯体の蛍光特性に選択性が出ることが分かった(J.Chromatogr.A,1140,230-235,2007).距離が4Å以下の場合,閉殻金属だけが,6Å程度では,閉殻金属および重金属錯体が発蛍光性となる.さらに10Å以上の場合は常磁性金属を含む全ての金属錯体が発光した.これは,発光団と金属イオン間の重原子効果やエネルギー移動が関与しているためと考察した.また,配位骨格によってもCE検出選択性が大きく変化することを明らかとした.4座配位では閉殻3価金属だけが選択的に検出され,6座配位では遷移2価金属イオンが検出された.また,8座大環状配位では遷移2価金属イオンに加えて典型2価金属イオンも同時検出された.この選択性は,泳動中に錯体のオンキャピラリー解離反応が進行するため,錯体の速度論的安定性によって制御されている.このようにCE用蛍光プローブ分子を設計する際,蛍光団と錯形成部位の距離および錯形成部位の構造を変化させることで検出選択性を制御し得ることが分かった.さらに,上記錯体群をCE分離する際に三元錯体平衡を用いる新規分離様式を開発し,精密分離に成功している(Analyst,132,237-241,2007).上記CE-LIFを用いた金属イオンの検出限界は数百〜数十pM(絶対感度アト〜サブアトモル)であり,従来のCE法にない検出感度での検出に成功した.特に,通常,消光効果を起こす常磁性および重金属イオン群を直接蛍光検出法でCE検出した例は世界でも初めてである.
|