研究概要 |
キャピラリー電気泳動-レーザー励起蛍光検出法に適合した金属検出用蛍光試薬を新規に合成した。配位部位としては8座非環状型ポリアミノカルボン酸のN-N架橋部位にシクロヘキシルを導入し剛性を高くしたCHX-DTPA骨格を用いた。発光部位としてはArレーザーの発振波長に適したフルオレセイン骨格を導入し, 両部位間距離をスペーサーで制御した配位子(L')を合成した。このスペーサーの存在により常磁性金属イオンの消光作用を抑制する。この新規配位子をCE-LIFに導入したところ, オンキャピラリー解離をしやすいため検出が困難であったCa^<2+>イオンを含む8金属イオンを同時検出することに成功した。検出限界は10^<-9>Mレベルと高感度検出を達成した。配位部位がDTPA骨格であるLと比較した場合, 大きな検出選択性の変化は観測されず, 予想と異なり配位座の剛性が解離反応に与える効果は小さがった。一方, 分離に関しては, L'錯体はL錯体に比べて分離能が向上することがわかった。このことはCHX-DTPA骨格では金属間での立体構造の差が大きいため電気移動度が変化していることを示しており, 分離原理を探る上で興味深い。 また, L錯体をジカチオン以上の四級窒素ポリカチオンを添加することで完全相互分離することができた。ジカチオンのN-N架橋鎖の炭素数を変化させ, L錯体とのイオン会合定数を求めたところ, 金属間で定数に差はみられなかった。しかし, 定量的にイオン対が生成する高濃度範囲で金属錯体間での移動度に差異が生じ分離が達成されていることが明らかとなった。この時, 炭素数が多い方が分離に有利である。これはジカチオンがL錯体とイオン会合体を形成し, その会合体の立体構造が中心金属イオンによって異なることが分離原理になっていることを意味する。従って, この分離モードが通常のイオン会合分離ではなく, 配位座の構造を認識しそのサイズを変化させる新しい分離様式となり得ることがわかった。
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