本年度は以下2点について実施した。 (1)パルス磁場発生用の空芯コイル作成と自動化測定装置の構築 (2)パルス磁場中での磁性ナノ粒子の集合挙動についての研究 (1)パルス磁場発生用コイルの作成を行なった。パルス磁場を発生する際、マックスウェル応力によりコイルが大きく振動するのを極力抑える為、ファイバ強化プラスチックなどを用いてコイルを力学的に押さえつける事により、ピーク値10Tの磁場を発生しても振動が無視できるコイルを作成した。また、リレー回路やデータ収録システムを用いて、自動で繰り返し磁場を発生させ、パルス磁場中で種々の計測が可能な装置のプラットフォームを構築した。 (2)開発した装置を用い、磁性ナノ粒子のパルス磁場中での挙動を時間分解吸収により調べた。磁場印加と透過光計測の同期はコイルの外側に巻いたピックアップコイルからの電気信号をトリガとして用いた。パルス磁場印加に伴って透過率が増加し、磁場消失で元の値に戻る現象が観測された。透過率変化の磁場依存性を調べると、磁場変化速度の速い増加過程と遅い減少過程で異なる応答が観測された。従って、μs程度の磁場時間変化に追随できない過程を観測したと考えられる。TEM観測の結果、粒子の直径は9.1nmであった。粒子の回転緩和時間を計算すると83nsと極めて短いので、この現象はナノ粒子の磁気双極子と磁気双極子の間に働く引力により集合が起こり、次いで離散する過程を観測している事が示唆された。
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