本年度は以下について実施した。 (1)レーザーアブレーション法による電極作成 (2)パルス磁場中における希土類(III)イオンのファラデー効果測定 (1)DNAのようなキラル物質のパルス磁気誘導電流を測定する為の電極を作成した。ガラス本板上に蒸着した金薄膜に、532nmのパルスレーザーを用いてumサイズの加工を施した。電極の形として、2極が対称なものと非対称なもの、また電極のギャップの大きさを10-50umの間で変化させて誘導電流測定を試みた。当初は、電流測定に高感度アンメータを用いる予定であったが、磁場のパルス幅が予想以上に大きくならなかった為、電流/電圧変換増幅器(I/Vアンプ)とオシロスコープを用いた。サンプルには166kbpの2本鎖DNAを用い、1-100kHzの交流電圧を印加し電極間に伸張させることを試みた。しかし、電極が非常に薄いため、壁への吸着がみられ伸張する様子は確認できなかった。また、パルス磁場による雑音をI/Vアンプが検出するため、より良い遮蔽が必要である。 (2)分子レベルで考えた場合、誘導電流、すなわちローレンツ力による電子の運動を分光学的に検出することも可能と考えられる。そこで、本研究ではその基礎検討として、希土類水溶液のファラデー効果を測定した。光源に410nmのレーザーを用い磁場中でその偏光面の回転を観測した。回転の度合いを表すヴェルデ定数を4f電子数に対してプロットすると、4f電子数が1のCe(III)から半充填するGd(III)とTb(III)から完全に充填するLu(III)で同じように変化する傾向が観測された。これは、f軌道中での電子の回転運動移動度を示しているものと考えられる。キラリティーが逆転すると回転運動の移動度に差が生じるので、フィラデー効果はその検出に有用と考えられる。
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