研究概要 |
我々は,すでに3つのステムからなるDNAの高次構造であるthree-way junction(TWJ)が,その分岐点付近で胆汁酸の一種であるコール酸と結合するのに対して,分岐点上に一塩基変異がある場合は,結合能を消失する現象を用いたSNPs検出法を開発している。本研究では,このSNPs検出法を用いたハプロタイプ解析法の開発を目指す。今年度は,分子内に2箇所のSNPを持つ鎖長110塩基のDNA断片を一方のSNPの違いに基づいて分離する方法を検討した。具体的には,(1)アガロースゲル,(2)SPR測定装置(BIAcore2000)用センサーチップにコール酸を固定化し,DNA断片の分離法を検討した。なお,110塩基のDNA断片はヒト遺伝子cytochrome P450 2C19(CYP2C19)由来の2箇所のSNP(636位,681位)を含む配列を用いた。 (1)コール酸固定化アガロースゲル 110塩基のDNA断片の一方のSNPがTWJの分岐点上に位置するように設計された蛍光標識DNAプローブをDNA断片と結合させてTWJを形成させた後,コール酸固定化アガロースを充填したカラムにDNA断片を注入し,Tris緩衝液,続いて5mMコール酸を含むTris緩衝液でDNA断片を溶出させた。各フラクションの蛍光強度を分光蛍光光度計で測定してカラムからのDNA断片の溶出量を確認したところ,ゲルへのDNA断片の非特異的な吸着により,一塩基の違いに基づくDNA断片の分離は困難であった。 (2)コール酸固定化SPR用センサーチップ アミノ基を持つコール酸誘導体をアミド結合を介してSPR用センサーチップに固定化した後,センサーチップに(1)と同様にTWJを形成させたDNA断片を注入したところ,DNA断片を一塩基の違いに基づいてほぼ完全に分離できることが確認された。
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