研究概要 |
腸内で発生するアンモニアは,血液により肝臓に運ばれ分解されるが,肝機能が低下すると血中濃度が高まり脳障害を引き起こす恐れがある。また,食事により呼気アンモニア濃度が一旦減少し,その後に数時間かけて上昇することが報告されている。これは健常者においても見られる現象である。 このように,アンモニアはヒト代謝物質の中で,病態診断や健康管理に有効なパラメータである。そこで本研究では,微量アンモニアのフローインジェクション(FI)自動分析法を確立した。アンモニウムイオンを含む水溶液を水酸化ナトリウム水溶液と合流させ,アンモニアガスに変換し,ガス拡散セルに導く。このガス拡散セルは,内側の管状多孔性膜をガラス管で覆った二重管構造となっており,アンモニアガスが管状多孔性膜を透過して内部を流れる水に吸収され,再びアンモニウムイオンとなる。その後,アンモニウムイオンが陽イオン交換カラムに導かれ,10分間濃縮される。希塩酸によりこのカラムからアンモニウムイオンを溶離し,サリチル酸を用いるインドフェノール誘導体化法により発色(極大吸収波長660nm)させ,吸光光度検出した。これら一連の分析操作は,FIシステムで自動的に行われる。試薬空試験値の3σから算出した検出限界はアンモニウムイオン態窒素として0.5ppbと高感度である。本法は海水中のシングルppbレベルの微量アンモニアの定量に応用されたが,今後,呼気アンモニアの有力な分析法として期待される。
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