生物結合モデルを使って、土壌環境中の重金属の植物に対する有害性を予測する上で、重要となるのが、土壌溶液のpHとフミン質の含量である。本研究の最終年度において、簡便な土壌溶液の抽出方法についてまず検討し、得られた土壌溶液のpHの測定とフミン質量を測定する方法を開発した。これにより、重金属汚染土壌における植物に対する毒性を予測するための全てのパラメータが整えられ、実際に当初の計画通り、土壌中の複数の重金属が複合的に植物に曝露される場合の有害性予測が可能になる見通しを得た。加えて、本年度においては、植物中に蓄積される重金属量についても併せて検討し、特に地下部(根)に高濃度の重金属が蓄積される可能性があることをまず見出した。従って、植物に対する重金属の毒性は、根において吸収された後に発現されるということを意味する。重金属の植物に対する毒性発現のメカニズム、すなわち毒性発現機序が整理できたことから、次のステップとして、重金属の植物に対する毒性の時間的な変化を予測するための材料が得られた。そこで、バイオアベイラブルな重金属の割合を基本的なパラメータとする毒性予測モデルを拡張し、50%生長阻害濃度を予測するモデルへと発展させることを試みた。本研究はまだ研究途上であり、予備的な検討段階に過ぎないが、生態毒性学的な視点から土壌環境管理に有効なツールを提供できるようになるため、更に精力的に土壌中の金属と植物体表面との相互作用について、データを蓄積していく必要がある。
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