研究概要 |
チタンやジルコニウムに代表される、低原子価前周期遷移化合物は炭素-炭素結合生成反応など様々な有機合成反応に用いられてきた。しかし、低原子価ニオブ化合物を用いた有機合成反応への応用例は非常に少ない。これまでの研究において我々は、NbCl_5から容易に合成可能な低原子価ニオブ種であるNbCl_3(DME)錯体を用い、脂肪族ケトンと芳香族アセチレンとの反応を行なうことにより、ニオブ-アルキン化合物を経由する反応が進行し、高収率かつ高選択的に1,1,2-三置換インデン誘導体が得られることを見出した。本科研費申請研究における目的はニオブ-アルキン化合物を利用した、新規触媒反応の開発にある。以下に平成18年度の研究成果を示す。 ニッケル触媒を用いた低原子価ニオブ-アルキン化合物とアリールヨウ化物とのクロスカップリング反応 低原子価前周期遷移金属は有用な反応剤であるが、これらを触媒反応の基質として用いた例は非常に少ない。当研究室では、既に低原子価チタン-アルキン化合物とアリールヨウ化物とのクロスカップリング反応が進行することを報告している。しかし、基質として用いるチタン化合物の単離・同定などが困難であると共に反応の選択性が悪く、生成物が一置換体と二置換体の混合物として得られるといった問題点が存在していた。本研究では、低原子価ニオブ-アルキン化合物を用い、ニッケル触媒存在下アリールヨウ化物とのクロスカップリング反応を試みたところ、選択的に二置換生成物が高収率で得られる事を見出した。本反応は、アルキンとNbCl_3(DME)から合成できるNbCl_3-アルキン化合物とリチウムアルコキシドROLiとの反応によって得られるNb(OR)_3-アルキン化合物を反応基質として用いることにより進行することがわかった。また、NbCl_3(DME)とアルコキシリチウムとの反応、ならびにNb(OR)_5(R=アルコキシ、アリーロキシ基)と種々の還元剤との反応を試み、効率的にアルコキシニオブ種が発生することを見出した。
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