研究課題
我々は本年度の研究期間において、活性化剤によらない電気化学的な手法でチオ糖からグリコシルトリフラートを単一のグリコシルカチオン等価体として発生・蓄積させることに成功し、グリコシル反応への応用も検討した。グルコシルトリフラート前駆体として、アノマー位にp-トリルチオ基を有し、酸化電位の低いグルコース由来のチオ糖(酸化電位:1.50V)を用いて支持電解質Bu4NOTfの存在下で低温電解酸化を行った。電気化学的に発生させたグリコシルトリフラートは低温条件下(-78℃)では安定であり、低温NMR測定(-78℃)によりグルコシルトリフラートの立体化学はアノマー位のプロトンのケミカルシフトと結合定数からα-トリフラートであると決定した。またグルコシルトリフラート中間体に対してメタノールを求核剤として作用させるとグリコシル化反応が進行し、β体のメチルグリコシドが主生成物として得られた。この結果も中間体がα-トリフラートであることを支持している。またグルコースの他に、ガラクトース、マンノースについてもグリコシルトリフラートを発生・蓄積し、低温NMR測定によりグリコシルトリフラートの立体化学を明らかにした。さらに種々のグリコシルトリフラートの熱的安定性を検討したところ-50℃以下では安定であった。グリコシルトリフラートは反応性の高いグリコシル化反応の中間体であり、電気化学的に発生させたグリコシルトリフラートも糖水酸基とのグリコシル化反応によって対応する二糖をβ体選択的に与えた。特にチオ糖を糖受容体に用いた場合は、得られる二糖をさらに糖供与体としてグリコシル化反応に用いることが出来るため、本手法を迅速なオリゴ糖ライブラリー合成へと展開する。
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Beilstein Journal of Organic Chemistry 3
ページ: 7
Journal of the American Chemical Society 129
ページ: 3046-3047
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