有機合成化学においてアセタールは重要な官能基である。しかし、その反応形式は専らアリルシランを用いたアリル化やエノールシリルエーテルとのアルドール型反応などの求核置換反応である。これに対し、アセタール炭素-酸素結合への形式的な挿入反応の例は数例しか報告されていない。我々は、これまでに、塩化ガリウム触媒を用いた環状アセタールの炭素-酸素結合間へのイソシアニドの触媒的挿入反応を報告している。しかし、この触媒系では非環状アセタールを基質として用いると、目的の挿入反応はほとんど進行しなかった。本研究では、トリフルオロメタンスルホン酸を触媒として用いると、温和な条件で非環状アセタールでも挿入反応が進行することを見出した。本反応は官能基許容性が高く、エステル基、シアノ基、ニトロ基などを持つ基質にも適用できる。さらにベンズアルデヒド由来のアセタールだけでなく、複素環や脂肪族アセタール、THPエーテルなども用いることができる。また、本反応を利用して、アルデヒドから1炭素増炭したα-アルコキシエステルをワンポットで合成することができる。すなわちベンズアルデヒド、イソシアニド、TMSOEtのトルエン溶液に触媒量のトリフルオロメタンスルホン酸を加えて2時間反応させた。最後に塩酸を加えて撹拌するとα-アルコキシエステルが2段階で67%の収率で得られた。これまでに例のないアセタールのカルボニル化を形式的に達成できたといえる。
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