研究概要 |
申請者は、アリール-1,6-ジイン化合物に塩基を作用させると、室温で環化異性化反応が進行し、置換ナフタレンが得られることを見出しており、本研究課題においてその詳細な検討を行っている。この反応システムでは、塩基により発生したプロパジルアニオンがアレニルアニオンへ異性化し、アニオンがジエン部分に含まれる分子内Diels-Alder反応が進行しているものと考えられる。このシステムでは、従来のLewis酸によるジエノフィルの活性化によるDiels-Alder反応の活性化とは異なり、アニオンがジエンに含まれることでジエンが活性化されるという全く異なる手法になりうると考えられる。 今年度は、この反応システムの合成的応用として、多様な生理活性を有する天然物であるアリールナフタレンリグナン類の合成研究を行った。これらの化合物は過去に多くの合成例が報告されているが、その構造的多様性に対応した効率的な合成法が確立されているとは言い難い。申請者は、本研究課題で開発したアニオン促進型分子内Diels-Alder反応を鍵反応とすることで、対応するプロパジルアルコールからわずか4工程でアリールナフタレンリグナン類の全合成に成功した。この手法では、原料として適切なプロパジルアルコールを使用することで、アリールナフタレンリグナン類の構造的多様性に対応することができ、効率的な合成経路を確立できたものと考えている。
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