研究概要 |
立体的にかさ高いジホスフィン配位子の高効率的創製を念頭に、ビス(ホスフィン)ボロニウム塩を新規に設計・合成した。本化合物は二級ホスフィンをボロニウム部位で架橋したものであり、従来の二級ホスフィンボランを用いたのでは立体障害のために合成が困難であった種々のかさ高いジホスフィンの合成を可能にした。本化合物は二級ホスフィンとブロモボランから容易に調製が可能であり、また安定であるため長期にわたる空気中での保存に耐えうる。これらを塩基で処理した後に、1,2-ジフルオロベンゼンクロム錯体と反応させることで、ベンゼン環のオルト位にホスフィノ基を有するジホスフィンのボロニウム塩が得られることを見いだした。またこのものをフッ化テトラブチルアンモニウムで処理することでボロニウム架橋部位が速やかに除去され、目的とするジホスフィンを高収率で与えることが明らかとなった。本手法はリン原子上に不斉点を有するP-キラルジホスフィンの合成にも適用可能であり、光学活性なP-キラルビス(ホスフィン)ボロニウム塩を用いることで、各段階で光学純度を損なうことなく、目的とするP-キラルジホスフィン類を合成することができた。得られたジホスフィン類の遷移金属錯体について、X線結晶構造解析を行ったところ、1,2-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)ベンゼンのロジウム錯体において,かさ高いtert-ブチル基が有効に中心金属周辺の空間を遮蔽し、他の空配位座を制御している様子が確認できた。またパラジウム錯体については、オレフィン類のヒドロエステル化において、触媒回転数約500にて効率的に反応を触媒することが明らかとなった。
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