研究概要 |
ジエンの環化重合においては環構造を含むポリマーが得られるが、従来知られている触媒では、その立体構造の制御は非常に困難であった。本研究ではジイミン配位子を有するパラジウム錯体が両末端ジェンの環化重合反応を引き起こし、繰り返し単位ごとに五員環を有する新しい構造の高分子を与えることを見出した。しかも本重合は、多彩な官能基を構造単位に含む高分子の合成にも応用できる。生じる高分子の五員環の立体配置はいずれも完全にトランスに制御されている。パラジウム錯体とジェンとの一対一の反応生成物のX線結晶構造解析により、重合の生長種を直接観測し、重合機構を明らかにすることに成功した。一方のビニル基にアルキル基を導入した片末端ジェンの環化重合では環化-チェーンウォーキング型の環化異性化重合が進行し、ポリマー鎖上に官能基を有するシクロペンタン環が一定間隔で配置されたポリマーが得られる。アルキル基の長さに応じて、その間隔を精密に制御することが可能である。さらに、この場合にも様々な官能基を導入することできる。ビスイミノピリジン配位子を有する鉄錯体を用いると、置換基を有していない1,6-ヘプタジェンの環化重合も進行し、95%がトランスに制御された五員環を含むポリマーが得られる。一方で、同様の配位子を有するコバルト錯体を用いた場合には、完全にシスに制御されたポリマーが得られる。両触媒による重合の速度論検討を行うことにより、異なる構造のポリマーを与える反応機構の違いを明らかにした。
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