本年度はN-アルキルアミド結合とN-無置換アミド結合を交互に有するポリ(p-ベンズアミド)のモデル化合物としてN-ペンテニルアミド結合とN-無置換アミド結合を交互に持った六量体オリゴアミドを合成し、その立体構造を検討した。 1.まずモノマーユニットを合成するために4-アミノ安息香酸メチルと4-ニトロ安息香酸クロリドを縮合し、得られたアミド体のN-アルキル化を行ったところ、目的物の他に副生成物としてイミデート体が生成した。そこで合成ルートを変更し、まず4-アミノ安息香酸メチルのN-アルキル化を行い、次に4-ニトロ安息香酸クロリドを反応させることでモノマーユニットを収率良く合成した。 2.次に六量体オリゴアミドの合成を検討した。得られたモノマーユニットに塩化スズを作用させてニトロ基のみを選択的に還元してアミン体に変換した。一方、モノマーユニットのエステルを水酸化ナトリウムや水酸化リチウムで加水分解しようとしたところ、アミド結合の加水分解が起こった。そこでヨウ化リチウムを用いてエステルの加水分解を行い、効率よくカルボン酸体に変換した。得られたアミン体とカルボン酸体の縮合反応を1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いて行い、二量体を得た。その後、同様にニトロ基の還元とエステルの加水分解および縮合反応を繰り返し行うことで四量体ならびに目的とする六:量体オリゴアミドを合成した。 3.六量体オリゴアミドの^1H NMRを測定したところ、濃度が高い場合は六量体オリゴアミドに対応し強度の異なる2種類のピークが観察された。しかし濃度を低くすると強度の弱いピークは観察されなかった。以上のことから、濃度が高い場合に観察された主ピークは分子内水素結合した六量体オリゴアミドであり、副ピークは分子間水素結合した六量体オリゴアミドであると示唆された。
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