研究課題
中空球殻構造という不安定な形状に起因する物性探索を目的とした研究を本課題では行なった。合成面では、複成分からなる中空球に関して精力的に研究を行なった。合成方法は以下の通りである。まず、ポリスチレン・ビーズに均一沈殿法を用いて水酸化鉄を均一にコーティングし、単離する。その後、水酸化コバルトを同様の方法を用いて水酸化鉄の外側にコーティングする。最後にこれらを空気中あるいは水素気流下でか焼することによって、内側の層がマグネタイト、外側がコバルトからなる直径約600nm程度の中空球の作製に成功した。現在、TEM測定、X線回折及び磁気測定を行なっており、プレリミナリーには興味深い性質を示す複成分中空球の開発に成功したといえる。一方で、物性面では、複成分粒子の物性の基となる単一成分中空球の磁気的性質について詳細な検討を行なった。具体的には、マグネタイト中空球の磁化曲線を測定することにより、保磁力の大きな温度依存性を見出した。このような大きな温度依存性は、中空球においてのみ観測され、様々な磁気測定を行なった結果、中空球が有する特異なドメイン構造に基づくことを明らかにした。続いて、酸化コバルト中空球に観測された低温での大きな残留磁化についても詳細な検討を行なった。その結果、中空球に由来する特異な緩和機構が関与していることを明らかにした。これらの研究を基に、今後は複成分からなるコアシェル型及び鈴状粒子の作製に取りかかる。現在、内部がSiO_2、外側が酸化鉄の鈴状粒子の作成に部分的に成功しており、様々な条件(金属塩の濃度など)を検討することで様々な組み合わせのコアシェル型及び鈴状粒子を作成できると思われる。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Journal of Materials Chemistry 16巻・31号
ページ: 3215-3220
Inorganic Chemistry 45巻・19号
ページ: 7584-7586