光に応答して構造変化を示す金属錯体モジュールをビルディングブロックとした多孔性金属錯体としてまず、Fe^<II>LIESST錯体になると予想される鉄-コバルトシアノ錯体[Na_<0.122>Co_<1.439>Fe(CN)_6]・5.1H_2O(1)および、その類似体数種類を合成した。それぞれの化合物に関して質量分析、熱重量分析等により組成の決定を行った。また、錯体(1)は粉末結晶であったため、大型放射光施設であるSPring-8において錯体(1)の粉末X線回折測定を行い、Rietveld解析により構造決定を行った。錯体(1)は水分子を細孔中に有しており、細孔内の分子吸着や脱着によって化合物の物性変化が期待できるものとわかった。続いて、蒸気及びガス圧を精密に制御し、かつ光を照射しながら錯体(1)の磁性及び吸着量を評価できる装置の構築を行った。具体的には吸着質によらず正確な圧力測定のできる隔膜真空計を有したガスハンドリング装置を製作し、これを磁気測定装置(SQUID)のサンプルプローブと接続し、密閉系で吸着量及び磁気測定可能なシステムを構築した。さらに、光応答性も同時に測定できるように、光ファイバー挿入ポートも製作した。また、本研究課題で導入したヘリウムリークディテクターにより、各実験において真空漏れがない状態を維持できるようにした。その後、この装置を用いて400Kの温度において減圧しながら、錯体(1)の吸着量変化の測定と磁化率の測定を行った。その結果、結晶内に吸着された水分子の減少が観測され、それに伴って磁化率も減少する現象を見出した。同様に400Kで減圧しながら錯体(1)の粉末X線回折測定を行った結果、脱水により徐々に構造が収縮することが明らかとなった。以上の実験により錯体(1)は、ゲスト分子の吸着、スピン状態、結晶構造の変化が密接に関連する物質である事が明らかとなった。
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