研究概要 |
1.研究の概要 β-cyclodextrin (β-CD)から4段階の反応により得られるper-(2,3-dideoxy-2,3-epithio)-β-cycloallin (1)を出発原料とし、per(2,3-didehydroxy)-β-CD (2)をほぼ定量的に合成した。次に、2の2,3-二重結合をオスミウム酸化することにより、構成糖をすべてマンノピラノシドに変換したβ-cyclomannin (3)の合成に成功(収率64%)し、その構造及び機能を検討した。 2.新規に得られた知見 (1)2の2,3-二重結合をもつ糖残基と隣接糖残基間のα-1,4グルコシル結合は、容易に酸加水分解される。これは、CDを出発原料とする糖鎖合成において有用な知見である。 (2)2のオスミウム酸化による2,3-二重結合への水酸基のシン付加では、選択的にマンノピラノシドが生成し、2,3-二重結合の反対側から水酸基が付加したアロピラノシドは生成しない。 (3)NMRスペクトルから、3はC_7対称な環構造を持ち、構成マンノピラノシドの立体配座は^4C_1型であることが分かった。また、3の構成糖残基の二級水酸基間に分子内水素結合が存在しないことが判明した。 (4)3は、β-cyclodextrinと比較して非常に高い水溶性を示した。 (5)3はメチルオレンジ(MO)に対して、β-CDと同程度の結合力を示した。3はβ-CDと比較して、環構造の剛直性が低い分、基質結合力が低下するが、一方で、2-OHが空洞の外側に配向し疎水空洞が広くなる分、基質結合力が亢進される。これらの正負の要因が打ち消しあって3はβ-CDと同程度の基質結合力を示すと考えられる。 (6)3/MO錯体とβ-CD/MO錯体の円偏向二色性スペクトルは、相互に有意の差異を示し、3とβ-CDが異なるキラリティを基質MOに誘起する事がわかった。
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