研究概要 |
長さの異なる直鎖アルキル基を導入したテトラセン分子の固体状態での光物性に関して調査を行うために、1,4,7,10-テトラアルキルテトラセンの合成を行った。なお、アルキル基がエチル、ヘキシル基のものは既に合成していたので、本年度はメチル、プロピル、ペンチル基を導入したテトラセンの合成を行った。従来用いた合成法ではアルキル基が長くなるにつれて反応率が低くなる傾向が見られたので、フッ素イオンを作用させてナフタレンビスアラインを温和な条件で発生させる新しい反応剤の開発を行った。この物質を利用することによりテトラセン骨格構築の収率が約2倍に増加することがわかった。固体の色メチル体:オレンジ、エチル体:黄、プロピル体:オレンジ、ブチル体:黄と赤、ペンチル体:オレンジ、ヘキシル体:赤が観察され、炭素鎖が1,3,5でオレンジ、炭素鎖が2,4で黄、炭素鎖が4,6で赤の関係が見られ偶奇効果というべきアルキル基の長さと固体色調の間に関係があることを見出した。なおブチル体に関しては赤と黄の2種類の結晶多形の存在することを見出し、固体析出時に溶かすのに用いた有機溶媒を変えることにそれぞれの結晶多形を作り分けることができる興味深い発見を行った。エチル体とヘキシル体の単結晶を作製しX線結晶構造解析を行った。その結果、エチル体はエチル基がテトラセン環と共平面であり分子全体の平面性が高いこと、またπスタック構造を有すること、およびヘキシル体はヘキシル基がテトラセンに対し垂直方向にジクザグ鎖が伸びていること、およびをテトラセン平面の垂直方向に重なりはないことを見出し、分子構造と配列が固体の色に関係することを明らかにした。
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